// 青空文庫アンソロジー

 無料ですぐに読める青空文庫の中から、
 中学生のみなさんにオススメしたい作品を選びました。
 @短いA読みやすいBおもしろい、を条件にしました。  ちょっとした時間があるときなど、見てみてください。
[vol 1] [vol 2] [vol 3] → review

 vol 1 小 説
 ●  いてふ(いちょう)の実 // 宮沢賢治→ review
 ●  蜘蛛(くも)の糸 // 芥川 竜之介→ review
 ●  画(え)の悲み // 国木田 独歩→ review
 ●  吾輩は猫である // 夏目 漱石→ review
 ●  夢十夜 // 夏目 漱石→ review
 ●  二ひきの蛙 // 新美 南吉→ review
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 vol 2 随 筆
 ●  雨の日に香を燻く // 薄田 泣菫→ review
 ●  草の親しみ // 薄田 泣菫→ review
 ●  藤の実 // 寺田寅彦→ review
 ●  小さき者へ // 有島 武郎→ review
 ●  鬼の話 // 折口信夫→ review
 ●  黒猫 // 島木 健作→ review
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 vol 3 詩
 ●  詩集『春と修羅』序より抜粋 // 宮沢賢治→ review
けだしわれわれがわれわれの感官や
風景や人物をかんずるやうに
そしてたゞ共通に感ずるだけであるやうに
記録や歴史 あるいは地史といふものも
それのいろいろの論料(データ)といつしよに
(因果の時空的制約のもとに)
われわれがかんじてゐるのに過ぎません
おそらくこれから二千年もたつたころは
それ相当のちがつた地質学が流用され
相当した証拠もまた次次過去から現出し
みんなは二千年ぐらゐ前には
青ぞらいつぱいの無色な孔雀が居たとおもひ
新進の大学士たちは気圏のいちばんの上層
きらびやかな氷窒素のあたりから
すてきな化石を発掘したり
あるいは白堊紀砂岩の層面に
透明な人類の巨大な足跡を
発見するかもしれません
 
 ●  詩集『青猫』より「野原に寢る」 // 萩原朔太郎→ review
この感情の伸びてゆくありさま
まつすぐに伸びてゆく喬木のやうに
いのちの芽生のぐんぐんとのびる。
そこの青空へもせいのびをすればとどくやうに
せいも高くなり胸はばもひろくなつた。
たいそううららかな春の空氣をすひこんで
小鳥たちが喰べものをたべるやうに
愉快で口をひらいてかはゆらしく
どんなにいのちの芽生たちが伸びてゆくことか。
草木は草木でいつさいに
ああ どんなにぐんぐんと伸びてゆくことか。
ひろびろとした野原にねころんで
まことに愉快な夢をみつづけた。
 
 ●  詩集『萱草(わすれぐさ)に寄す』より
「のちのおもひに」 // 立原道造→ review
夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午さがりの林道を

うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
――そして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた……

夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには

夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう
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 review...作*品*紹*介
宮沢賢治「いてふ(いちょう)の実」賢治といえば「オツベルと象」や「やまなし」、詩「雨ニモマケズ」が教科書に採られていますので、名前はだれでも知っていますよね。実は面白い作品をたくさん書いています。その中からひとつ、選ぶなら「いてふの実」。いてふの実たちの気持ち、会話が楽しめます。賢治作品には、人間以外の動物、植物たちの気持ちになって書いてみたものが多いのです。ちょっと笑える「カイロ団長」「ツェねずみ」、ちょっと難しい?「ポラーノの広場」もお薦め。
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芥川 竜之介「蜘蛛(くも)の糸」芥川もまた教科書では「トロッコ」や「羅生門」などが有名。もう少し難しいけれど面白いのは「薮の中」。ドラマ化、映画化、パロディも多いですね。芥川は現代の「小説」という形について考えた人。小説を読もう!と思ったときには思い出してみて。実は絵も描いていますが、河童がどことなく可愛くてステキ。ちなみに芥川の命日(7月24日)は河童忌(かっぱき)と呼ばれています。
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国木田 独歩「画(え)の悲み」:画の好きな、ある少年のお話。ライバル意識について、本当にライバルだと思っている相手には、なかなか言えないもの。でも、一度うちとけると、今度は一生の友達にもなれる。少し切ない、なつかしい感じの物語。
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夏目 漱石「吾輩は猫である」漱石といえば猫…読んだことはなくても、「吾輩は猫である。名前はまだ無い」という有名なセリフは知っている人も多いはず。最初の数行でもいいので、この機会にぜひ読んでみてください。基本的にはギャグなので笑って読みましょう。
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夏目 漱石「夢十夜」:「こんな夢を見た」で始まる、十の不思議なお話。昨夜みた夢のこと、覚えていますか? 覚えている間に書きとめて夢日記をつける、というのも面白いですね。同じように夢について書かれた内田百閨u冥途」もお薦め。
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新美 南吉「ニひきの蛙」:なぜか童話には蛙がたくさん登場します。賢治にも「カイロ団長」のほか「畑のへり」や「蛙のゴム靴」など、"蛙モノ"と呼ばれるほどたくさんあるのです。なんとな〜く、蛙がかわいく思えてきませんか?ちなみに私はカエル大好きですv おっと、話がそれました。南吉で有名なのは「赤い蝋燭(ろうそく)」「手袋を買いに」などですね。
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薄田 泣菫「雨の日に香を燻く」薄田泣菫は詩人でもあり、エッセイストでもあります。詩的な感性で書かれたエッセイを読むと心洗われるようです。雨の日はあまり好まれませんが、雨のときには雨の日ならではの楽しみ方があるのです。私は晴れている日よりは、曇りや雨が好きです。四季とあわせて、さまざまな天気の風情を感じるのも面白いものです。
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薄田 泣菫「草の親しみ」:草を刈ったあとのにおい、すがすがしい感じがしませんか。でもなんとなく、さびしい感じもしますよね。それまでとは違った風景になったような気がしたり。刈られてしまう草についての、ちょっとした感慨が書かれています。
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寺田寅彦「藤の実」寺田寅彦はさまざまな視点からエッセイ=随筆をたくさん書いた人。どの随筆もたいへん面白いですが、私が一番「へぇぇ〜」っと関心したのがこの文章。植物のサイクルの謎を解き明かせたら、もっと面白いのですが。知っている人は教えてください。
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有島 武郎「小さき者へ」有島といえば「一房の葡萄(ぶどう)」など、道徳的な作品で有名です。「小さき者へ」も、よく教科書に載る、代表作のひとつ。小さき者=子どもたちへむけたメッセージ。自分の親も、こういうことを言いたいのかなぁ〜?などと思いつつ、親から子への“愛の言葉”に耳を傾けてみてください。
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折口信夫「鬼の話」折口は作家であり、民俗学者。昔から伝わる民俗・習俗について研究しています。その中で短くて面白いのが「鬼の話」。鬼、という言葉はよく使いますが(…あえて例は出しません)、いったい何を鬼というのでしょうか。文章は少し難しいですが、がんばって読んでみる価値あり!今日は無理でも一年後には読めるかも。
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島木 健作「黒猫」:一覧をよくよく見てみると、猫に関する作品が多くなってしまいました。「吾輩は猫である」、この「黒猫」、朔太郎の詩集『青猫』…実はもっとあるんです、猫作品。内田百閨uノラや」、宮沢賢治「猫の事務所」ペロー「猫吉親方(長ぐつをはいた猫)」…もっともっと読んでみてください。一番のお気に入りはどれですか?
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宮沢賢治『春と修羅』序文:宮沢賢治は作家であり、詩人であり、教師であり、農民であり、さまざまな顔を持っています。詩も多く残していますが、彼の考え方の基本をよく表している部分を紹介しました。
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萩原朔太郎『青猫』より「野原に寢る」朔太郎は感覚についての表現をたくさん使います。今回は今まさに「伸びていく」みなさんに、ぜひ読んでもらいたい作品を選びました。
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立原道造『萱草(わすれぐさ)に寄す』より「のちのおもひに」:この作品は、よく教科書にも載る、有名なものです。「夢」はいったいどこへ行くのか…考えたことがありますか?
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